皆川班の研究成果がプレスリリースされました
基礎生物学研究所の鎌田(藤村)このみ研究員と皆川純教授は、植物の光合成装置を過剰な光ストレスから守るNPQ反応を制御するタンパク質因子「DET1」が、ゲノム内の“動く遺伝子”であるDNAトランスポゾンのサイレンシングにも関与することを明らかにしました。DET1遺伝子が欠損した緑藻クラミドモナス変異株は、弱光条件下において当初はきわめて遅い成長を示しますが、やがてその成長は劇的に改善されます。この回復は、DNAトランスポゾン「Bill」が光保護遺伝子LHCSRの転写因子に自発的に挿入されNPQ反応を無効化することによって引き起こされたものでした。この発見は、緑藻細胞内において、LHCSRを介した短期的な環境応答能力と、トランスポゾン活性化による長期的なゲノム適応能力とが、DET1によって統合的に制御されているという、これまで知られていなかった新たな分子メカニズムの存在を示唆しています。本成果は、生物が環境の変化や変動に対してどのように適応し進化してきたのかという根源的な問いに、新たな視点を提供するものです。
【基礎生物学研究所プレスリリース】https://www.nibb.ac.jp/pressroom/news/2025/08/20.html
【発表雑誌】 New Phytologist
【論 文 名】From Photoprotection to Plasticity: Transposon Activation in the Chlamydomonas det1 Mutant
【著 者】Konomi Fujimura-Kamada and Jun Minagawa
【 DOI 】10.1111/nph.70436
【掲載 URL】https://doi.org/10.1111/nph.70436

